« 2020年1月 | トップページ | 2020年8月 »

2020年2月

2020/02/05

ヴイックスの説明文が、ちょっとなにを言っているのかよくわからない


風邪の治りかけで喉がいがいがして咳をしていたら、知人が「ヴイックス メディケイテッド ドロップ」5個入りのスティックを1つ、くれました。いわゆる「のど飴」などと違い、セチルピリジニウム塩化物水和物という薬剤を配合した指定医薬部外品なので、喉に対する効果も高そうですし、シュガーレスというところも好ましい。

用法としては「のど飴」などと同様に、スティックから「ヴイックス メディケイテッド ドロップ」を取り出して口の中に放り込めばいいのでしょうが、いわばお菓子である「のど飴」とは違い、いちおう指定医薬部外品なので、正しい効果を得るには正しく服用する必要があると思い、スティックに書かれた「用法・用量」を読みました。スティックには「用法・用量」として、次のように書かれていました。


大人(15才以上)及び5才以上の小児1回2個を1日3~6回1個ずつ2個までを口中に含み、かまずにゆっくり溶かして使用してください。2時間以上の間隔をおいて使用してください。※5才未満は使用しないでください。
(2020年2月時点)


う~んと、これ、ちょっとなにを言っているのかよくわからない。
分解しながら読み解いていきましょう。


大人(15才以上)及び5才以上の小児


まず、この時点でちょっと気づいたことがあります。「5才以上の小児」と「大人(15才以上)」という書き方をするということは、15歳未満は「小児」ということになるのですね。なんとなく、「小児」というと小学生(12歳)くらいまでの印象を持っていたのですが、中学生も小児なんだ。

少し調べてみたところ、厚生労働省のウェブサイトに「医療法施行規則第十六条に関する疑義について (昭和三一年五月一日 三一医第三七〇号)(厚生省医務局長あて長野県知事照会)」という文書がありました。1956年に長野県知事が厚生省(当時)医務局長あてに、「医療法施行規則第16条第1項第4号に規定される『小児』とは、具体的に何歳から何歳までを言うのか?」という問い合わせを行っています。

この問い合わせの文章に長野県知事は、参考として、児童福祉法第4条における分類、旅客及び荷物運送規則第9条における分類、さらに栗山博士なる人の学説を掲載しています。
それによると、児童福祉法では、1歳未満を「乳児」、満1歳から小学校に入るまでを「幼児」、小学生から満18歳までを「児童」と呼び、そもそも「小児」という分類はないようです。一方、旅客及び荷物運送規則では、1歳未満を「乳児」、満1歳から6歳未満を「幼児」と呼ぶのは児童福祉法とおおよそ同じですが、こちらには「小児」の区分があり、それは6歳から12歳未満となっています。
さらに、栗山博士なる人の学説では、「小児とは出生から春機発動期(思春期)までをいう。女児では、十四、五歳 男児では十六、七歳までをいう。」のだそうです。男の子のほうが「小児」の期間が長いのは、なんとなく納得できる気がしないでもない。。。

このように「小児」についての定義がいくつかあってよくわからないから、医療法施行規則では何歳から何歳までを「小児」と規定しているのか教えてくれという問い合わせを、当時の長野県知事さんが国に対して行ったわけですね。
それに対する厚生省の回答は次のようなものでした。


医療法施行規則第十六条第一項第四号に規定する「小児」とは通常小児科において診療を受ける者をいうのであって、具体的に何歳から何歳までと限定することは困難である。
(昭和三十一年五月二十一日 医収第一八六〇号)(長野県知事あて厚生省医務局長回答)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta0783&dataType=1&pageNo=1


なんてざっくりした回答。「通常小児科において診療を受ける者」ってなんだよ。

では、実際に何歳くらいまで小児科で診療を受けるのか。調べてみると、これもいろいろでした。
日本小児科学会は「成人するまで」を小児科の診療対象としていますが、小児科医の多くは「小児科にかかるのは中学生くらいまで」と考えていて、内科医の多くは「小児科にかかるのは小学生くらいまで」と考えているらしいです。治療をする医者の側がこんな具合だからか、一般の人も自分の子どもは小児科に行くべきか内科に行くべきかで迷うことが少なくないようで、「小児科の受診年齢は何歳までか」といった記事がウェブ上にはたくさんありました。
なお、医療用医薬品の適応においては一般的に15歳未満を「小児」とするようです。

こういうふうに「小児」に対する明確な定義がなく、かつ、治療を施す側も立場によって「小児」の年齢範囲を違うように考えていて、患者側も「小児って、何歳までだよ?」と迷っているような状況において、「ヴイックス メディケイテッド ドロップ」の用法・用量を「大人(15才以上)及び5才以上の小児」とわざわざ分ける必要はあるのでしょうか。単純に「5歳以上1回●個(5歳未満は服用禁止)」でいいのではないかと思うのですが、どうですかね。

さて、ここまででわかったのは、「ヴイックス メディケイテッド ドロップ」を服用できるのは5歳以上の人である、ということです。
問題は、この先です。


1回2個を1日3~6回1個ずつ2個までを口中に含み、かまずにゆっくり溶かして使用してください。2時間以上の間隔をおいて使用してください。


この文章が、いちばんの混乱のもとだと思います。これも分解してみましょう。

まず、「1回2個」を「1日3~6回」、服用するのですね。ということは、1日に合計で6個~12個を服用するわけですね。
ところが、そのすぐあとに「1個ずつ2個までを口中に含み」って、どういうこと? 「1回2個」を服用するんじゃないの? それとも「1個」なの?? 「まで」ってなに???
さらに「2時間以上の間隔をおいて使用」って、1個を服用したら次の1個を服用するまでに2時間待たなくてはいけないの???? それってつまり、最大量の12個を服用するには24時間かかるってこと?????

読んでいて頭がくらくらしてきます。

いったいどういうことかと思って調べたところ、要するに、「いちどに2個を口の中に入れるな」ということのようです。1個を口に入れ、それが溶けたらもう1個を口に入れる。これを1日に3回~6回行うが、次の「回」を開始するまでには2時間以上の間隔をあける、というわけですね。

「ヴイックス メディケイテッド ドロップ」は、口の中で溶かすことで、喉を潤しながらドロップ内に配合された薬効成分を摂取できるようになっています。1回に必要な薬効成分量はドロップ2個で摂取できるようですが、「喉を潤す」という観点から考えると、ドロップがより長い時間、口の中にあるほうが効果的なようです。そのため、いちどに2個を口に入れるのではなく、1個ずつ口の中で溶かしてほしいということのようです。

ここで気になるのが「1個ずつ2個まで」という表現です。

「2個まで」という表現には「3個以上はだめ」という意味があります。調べたところ、最大個数に制限をつけているのは、それ以上を服用すると、消化系の弱い人はおなかをこわす可能性があるからだそうです。その意味で「2個まで」という記載があるわけです。その点については理解できました。

ただ、ここで別の疑問が生じます。「まで」という表現は、最大値しか示さないということです。つまり、「2個まで」という表現は、「2個が許される最大値であり、3個以上を服用してはだめ」ということは示しますが、2個より少なく服用することについては可否を規定していないのです。

もちろん、服用することを前提としたドロップについての文章ですから、0個でもOKということはないでしょう。また、「2個まで」の前には「1個ずつ」という文言もありますから、たとえば1個のドロップを半分に割って0.5個を服用するといったことも除外されると考えてよいでしょう。

こうしたことから、「1個ずつ2個まで」という文章が示す「1回あたりの服用量」は、「1個」もしくは「2個」ということになります。つまり、1回あたりの用量は「1個」でもいいし、「2個」でもいい、という意味になるのです。

あれあれ? これは困りました。
スティックに書かれた「用法・用量」は、その前の部分で「1回2個」と断言しています。なのに、その少しあとに「2個まで」、つまり「1個」でも「2個」でもいいという表記があります。
そして1日の服用回数は「1日3~6回」です。1回の服用量が「2個」で固定であれば、1日の服用量は6個~12個ですが、1回の服用量が「1個」でも「2個」でもいいとなると、1日の服用量は最少3個~最多12個となり、最少個数と最多個数にずいぶんと開きができてしまいます。

1回の服用量は「2個」で固定なのか、それとも「1個」でも「2個」でもいいのか。調べてみたのですが、「規定量より多く服用してはだめ」と書かれている記事はみつかったものの、「規定量より少なく服用してもいい」という記述はみつけられませんでした。そのため正解がわかりませんので、「2個で固定」の場合と「1個でも2個でもいい」場合との両方について、もとの文章を書きなおしてみましょう。


《1回量が2個で固定の場合の用法・用量例》
5歳以上、1回2個を1個ずつ口中に含み、かまずにゆっくり溶かして、1日3~6回使用してください(5歳未満は使用しないでください)。1回使用後は、次の使用までに2時間以上の間隔をおいてください。


《1回量が1個でも2個でもいい場合の用法・用量例》
5歳以上、1回2個までを1個ずつ口中に含み、かまずにゆっくり溶かして、1日3~6回使用してください(5歳未満は使用しないでください)。1回使用後は、次の使用までに2時間以上の間隔をおいてください。


どうでしょうか。スティックにもともと書かれていた「用法・用量」よりも、1回あたりの個数、使用のしかた、使用間隔が、わかりやすくなったのではないでしょうか。文字数ももとの文章とほとんど変わらない(少し短くなりました)ので、スティックの狭いスペースに書き切れないといったこともありません。

| | コメント (0)

« 2020年1月 | トップページ | 2020年8月 »